海外での漢字学習:日本の子どもたちと同じように勉強しないといけないの?

今日は、日本語を勉強するものにとってとても大変な漢字学習のお話です。

さて、今、幼児たちに日本語を教えていますが、どの子どもたちも漢字学習が大好きです。新しい文字を覚える喜び、知っている漢字が増えてくるうれしさで顔が輝いています。

 

では、全ての小学生、中学生の子どもたちがこのニコニコ顔で漢字学習を続けていくことができるのでしょうか。少しずつ、子どもたちの漢字学習がつらいものになってきていませんか。さて、それはどうしてでしょうか。

どうして漢字学習が嫌いになるのだろう、どのようにしてそれを克服すればいいのだろうということを、これから何回かに分けて書いてみたいと思います。

そもそも、日本の子どもたちも苦労する漢字学習

さて、漢字学習、日本で生活する子どもたちにとっても大変です。小学校で習う漢字というのは文部科学省の学習指導要領で決められているのですが、小学校では以下のようになっています。

1年生:80字 2年生:160字 3年生:200字 4年生:200字 5年生:185字 6年生:181字

6年間で合計1006字となかなかの量です。日本で毎日、日本語を使い、日本語を目にしている子どもたちは、毎日コツコツと勉強して覚えています。では、海外で生活をする子どもたちも、この通りに漢字を勉強しないといけないのでしょうか。

本当に漢字学習は必要なの?

さて、海外で子育てを頑張る保護者のみなさま。お子様にどれくらい漢字ができるようになってもらいたいですか。日本で生活する子どもたちと同じように漢字の読み書きができるようになってもらいたいと感じられていますか。でも、そこで少し考えられるのではないでしょうか。「でも、日常生活で日本語を使う機会もあまりないのに?」「これから日本で生活をする機会もないかもしれないのに?」

さて、では本当に海外で生活をする子どもたちに漢字学習は必要なのでしょうか。私は「はい」と答えたいと思います。特に、漢字の楽しさを感じてもらいたい、漢字を通して日本の文化を感じてもらいたいと思います。また、漢字を読むことができれば、日本語で書かれた多くの情報や芸術、娯楽へアクセスができるようになります。

日本の子どもたちと同じように漢字学習をするの?

では、海外で生活をする子どもたちは、日本で生活をする子どもたちと同じように漢字を勉強しないといけないのでしょうか。私が感じる答えは「いいえ」です。

海外で生活をしている子どもたちは、月曜から金曜までは現地校に通っていることが多く、日本語で勉強するのは週末一度の補習校や継承語学校のみ、もしくは家庭での学習ということも多いのではないでしょうか。漢字を学習できる時間は日本の子どもたちと比べてとても限られています。この時間的な制約は大きいです。

ただ、私が、海外で生活をする子どもたちは、日本で生活をする子どもたちと同じように漢字を勉強しなくていいと思うのはそれだけが理由ではありません。

学習指導要領の学年別漢字配当表は、日本の子どもたちがそれぞれの年代で出会う語彙を元にして考えられているのではないかと思われます。また、おそらく国語の教科書や他の教科で出てくる漢字との兼ね合いもあるのでしょう。

でも、日本の生活にあわせて用意されたものなので、海外で生活をしている子どもたちの日常生活にはあまり出てこない語彙もあります。例えば、田んぼを見たことがない、また「田んぼ」という言葉を聞いたことのない子どもたちへ「田」の漢字を伝えても響き方が異なります。このように考えると、日本の学年別漢字配当表にこだわる必要は全くないと考えています。

また、動物が大好きな幼稚園のお子さんは、動物の漢字を知りたがり、次々と新しい漢字を教えて欲しいとたずね、次々と覚えていきます。このような状況で、本来ならば小学校4年生で習うべき漢字の「熊」を避ける必要は全くないのではないでしょうか。

楽しいと思う文字、覚えたいと思う文字から順々に覚えていく、という方法の方が記憶にも残りますし、楽しく学べるのだと考えています。

漢字を書けるようになる必要はあるの?

しかし、それでも「熊」という漢字、幼稚園児や小学校低学年生が学ぶにはあまりにも画数が多いように感じませんか。もちろん、「熊」という字を書けるようになることを目指すのであれば、小さいお子様への負担は大きいように感じます。でも、ここで、一度立ち止まって考えてみませんか。はたして、漢字を書けるようになる必要があるのでしょうか。

 

そもそも、日本人の私でさえ、海外での日常生活で日本語を書く機会はあまりありません(このようにブログを書いてはいますが)。しかし、日本の本やニュースを読んだり映画を見たりはします。日本語を書けることよりも読めることの方が生活を豊かにしてくれるように感じます。

また、漢字を読むということは少しの努力で達成できて成功しやすいですが、漢字を正しく書くということは、画数が多くなると失敗しやすいです。成功体験が多くなると楽しくなってきますが、うまくできなかったことが続くと、楽しくなくなってきます。

日常生活で日本語を使う必要のない中での日本語学習です。まずは「楽しんで漢字学習をする」ということを考えると、漢字を書くということにあまりこだわらなくてもいいのではないでしょうか。

もちろん、漢字を書くことが大好きなお子さんもいます。難しい漢字を書けるようになることにワクワクするお子さんもいます。また、将来、日本の大学に進学したい・させたいというお子様ご自身やご家庭の将来のプランもあるでしょう。もちろん漢字を書くことができるのにこしたことはありません。ただ、これが漢字学習を楽しむことのできない原因となるのであれば、あえてこだわらなくてもいいのかなと思います。

さて、では次回から子どもたちが漢字学習が嫌いになる原因とその対処法について、少しずつ探っていきたいと思います。

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