海外で生活をする子どもたちへの日本語学習:心がけたい7つのこと

国際結婚で、海外で就職をして、また海外駐在でといった様々な理由で、日本国外での生活が始まります。日本から遠く離れた地で生活を確立していくのは簡単なことではありません。さらに、現地で子育てをするとなると、考えないといけないことは多くあります。その中の一つが、お子様の日本語教育についてではないでしょうか。

また、ご自身は日本国外で生まれ育ったけれども、日本人のお父様やお母様がいらっしゃり、そのご親御さんの努力の甲斐もあって、日本語や日本文化を継承している方々も多くいらっしゃいます。そのような方々が、ご自身のお子様にも同じように日本語や日本文化を継承してもらいたいと考えるのは自然なことのように感じます。

状況はそれぞれ異なりますが、日本にルーツのある多くの子ども達が海外で生活をし、日本語を勉強しています。通常は学校での言葉は現地語となるので、お子様の日々の言葉はどうしても現地語が強くなってきます。日本語が主要な言語ではない中での日本語学習、本当に大変です。もちろん、勉強をする子どもたちにとっても大変なことですが、その日本語環境を整える保護者の方々のご苦労を考えると、本当に頭が下がります。

もちろん、ご家庭の状況やお子様のご様子も様々なので、一概に言えるものではないのですが、お子様の日本語教育を行われる際にヒントになるかなと思うことを、少し駆け足になりますが、ご紹介したいと思います。

日本語を使わなければいけない環境をストレスのない範囲で作り出す。

言葉はコミュニケーションを取りたい相手と、スムーズに意思の疎通を図るために使用するものです。もし、あなたが日本語が得意で英語は苦手だとして、お話をする相手も日本語が流暢な方ならば、わざわざ英語を使うでしょうか。私ならば使いません。

皆様が英語圏にお住まいだとしましょう。皆様は日本語ネイティブですが、お子様は英語の方が得意です。お父様、お母様が英語が流暢な状況なのに、お子様はわざわざ、日本語で話すでしょうか。普通に考えると、難しいのではないかと思います。

このような中で、日本語を使わなければいけない環境を作るのは、いろいろな工夫が必要になってくるのではと思います。ここではあまりスペースがないのですが、私の分かっている範囲で少しずつ、ブログでお伝えできればと思います。

「頑張ったこと」「できるようになったこと」ことを、小さな活動の単位でほめる。

「ほめること」の大切は、いろいろなところですでにお聞きお呼びなのではないでしょうか。しかし、「うわ〜、すごいすごい」「さすが、頭いいね!」とほめ続けていれば、それでいいというわけではありません。

逆に「頭がいいね」といったような素質をほめるような方法では、子どもたちは次に行う際に失敗をおそれるので、次回の頑張りやモチベーションにならないとも言われています。

「ほめること」はとても大切です。しかし、ここはもう一歩、踏み込んでどのようにほめるのがいいのかを考えてみませんか。ほめることについては、いくつかすでにブログを書いていますので、よろしければ訪れていただければうれしいです。

他の子どもたちと比べて、「できるようになること」を決めない。

海外で生活をしている子どもたちの日本語レベルは本当にまちまちです。日本で小学校生活を経験してから海外にいらしたお子さんもいらっしゃれば、ご家庭や学校でもこれまで、ほぼ、日本語を使ってこなかったお子さんもいらっしゃいます。

例えば現地の補習校や継承語学校、また日本関連のコミュニティーなどに参加していらっしゃったり、同じような環境のご友人のご家庭との交流もあるでしょう。このような中で、同じような年齢のお子さんの日本語習得具合が気になるのは、これはもう仕方がありません。

でも、まわりのお子さんをみて、自分のお子さんの「できるようになること」を決めなくてもいいのではないでしょうか。お子様の特性や状況を最も理解されているのは保護者の皆様です。その中で、お子様はいったい、どれくらい日本語ができればいいのか、目標をどこにおくのか、少し考えてみませんか。

日本の「国語学習」のやり方をそのまま持ち込まない。

日本で生まれ育ち、常に日本語環境にある子どもたちと、海外で生まれ育った子どもたちとでは、保護者の方々の絶え間ない努力があったとしても、全く同じ状況というわけにはいかないのではないでしょうか。現地校では日本語以外の言語を使うでしょうし、また、週末の補習校や継承校の学習時間は、当然の事ながら日本の学校での学習時間には及びません。

このような違いがある中で、日本で生まれ生活する子どもたちが日本で使用する学習ツールが、果たして海外で生活する子どもたちの日本語学習にとって効果的なものなのかどうか、丁寧に考えていく必要があると思います。

日本での国語の学習方法や、日本で生活する子ども達向けに用意された学習ツールは、日本語を継承語として学習する子どもたちにうまくあっていないこともあります。(これは、別の機会にもう少し詳しく書きたいと思います。)

日本で生活する子どもたちのことを考えて作られた国語教育・国語教材から少し離れて、それぞれのお子様の現状や特徴に沿った学習方法を考えてみるのはいかがでしょうか。

「日本」を楽しむことのできるものや場所に出会う環境を用意する。

海外で生活をする子どもたちの日本語学習のお悩みでとても多いのは、日本語学習に興味を持てない子どもたちがいかに日本語学習を続けていくのかということだと思います。

お子様が大きくなってくると、他に楽しいものもいっぱいできてきます。そのような「競争相手」に日本語学習が太刀打ちするのはなかなか難しいかもしれません。しかし、ここで覚えておきたいなと思うのは、日本語学習自身には興味がもてなくても、子どもたちが日本を楽しめることはあるかもしれないということです。

もちろん、そのようなものは簡単に見つからないこともよくあるので、「ダメもと」くらいの感覚で、押し付けがましくない範囲で日常生活の中に用意しておくことを、いつも心がけておくのがいいかなと思います。

そして、そのような「種まき」をしていくことで、もしお子様が途中で日本語学習を断念してしまっても、成長のどこかの段階でお子様が日本語学習へ戻ってくるきっかけになるかもしれません。

家族で家庭での言葉の使用方針を話し合う。

複言語家庭でお子様が言葉を話すようになってくると、さて、「家で使用する言葉をどうしよう」というお話になったのではないでしょうか。もしかしたら、すでに「OPOLアプローチ(One Person One Language)」や「MLAHアプローチ(Minority language at home)」というお言葉を耳にしたこともあるかもしれません。

ご家庭での言語使用環境は、お子様の教育方針のみならず、ご家族の長期的な将来設計、また保護者の方、それぞれのアイデンテティにも結びつく大切なものです。ですので、個人的には「このアプローチが正解」という単純なものではないと考えています。

こちらも、今後のブログでもう少し詳しく書ければと思いますが、まずここで述べておきたいのは、ご家族でご家庭での言語の使用方針を早い段階でしっかり話し合われるのがいいのではということ、また、長期的な視点と具体的な目的意識を持って使用方針を考えること、そして、負担なく実行できる使用言語方針を考えることです。

毎日の生活のことです。お子様が混乱するような状況を避けるためにも無理は禁物です。

自分(保護者)の努力をほめ、自分を責めない。

最後に大きな声で言いたいのは、ご自身の努力をほめてくださいということです。これまで多くの保護者の方にお会いしてきましたが、皆様の日々の努力や工夫には本当に学ぶことが多く、頭が下がる思いです。

そして、今、このブログをご覧になっていただけているということは、お子様の日本語教育への情報収集にもお時間を割かれているということになります。どうぞ、その努力をご自身で認めていただくことで、お子様の日本語教育が「気の重いもの」から「楽しいもの」になればいいなと思います。

それぞれのお子様の特徴もありますし、またご家庭の状況、さらに日本語や日本文化に触れる機会の多い地域にお住まいかそうでないか、日本によく一時帰国するのかしないのかと、それぞれのご家庭の状況は多岐に渡ります。

その中で、お子様の状況を一番、わかっていらっしゃるのは保護者の方です。今後、様々な機会のなかで、皆様のお声を聞かせていただけるとうれしいなと思います。

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